役立たず

朝、出勤前の慌ただしさの中で
珍しく早起きしてきた娘に「父ちゃんとお風呂入りたいか？」って聞いたら
即答で「父ちゃんとお風呂入りたい!」って返ってきたんで
試しに「母ちゃんとお風呂入れよ」って言ったら
やはり即答で「嫌！」って返ってきた
仕方がない
今日は早く帰って娘と風呂に入る約束をし家を出た

仕事は月の半ばに差し掛かり、今週は外回りのピーク
午前１０時、此花区伝法から始まり、午後からは梅田で２件
丸一日外出だった

その間に、６日の日に某政府系金融機関へ同行した顧問先より、審査結果が融資ゼロ回答だったと連絡が入り
なんだそれ？
って感じでちょっとした『事件』となり、誰も何も言わないけど結果が全てのこの世界では、僕に『役立たず』の烙印が押されたことを自覚した

午後６時を回る頃、本日の外回りを終え重い足取りで事務所に帰り着いた
一呼吸置いて、当然のごとく『役立たず』を待ち構えていたボスからの事情聴取がスタート
されどこの時間から何ができるわけはなく『役立たず』に出来ることは全ては明日だ

時計は午後８時に向かっている
事情聴取から解放された『役立たず』はやるせない疲労感でいっぱいだった
とりあえず逃げるように事務所を後にした
ただ娘との約束だけが今夜の救いだ
家に帰り着くと早速、お約束のお風呂
蛇口を全開でギャーギャー言って冷い水を掛け合い
最後はシャボン玉を飛ばした
生み出されては、光に反射しキラキラと輝きながら儚くも消え去る透明の球体

チビたちと同じ目線で、その瞬間を楽しみ全てを忘れた

そしてお気に入りの≪直搾り≫を飲みながら嫁さんが作ってくれた豚鍋をつつき
ドラマ≪トライアングル≫を眺めた

『役立たず』には至福の時である
ドラマん中では、スタート当初謎だった実業家の志摩野さんは死んでしまったな
中国で成功して、幼い頃に離れ離れとなった妹を探しにやってきて
巡り会えたのに、実の兄だと明かしてからは、ほんの束の間だったね

ドラマも現実と同じく切ない世界を表していた

でも我が家はとても≪自然≫だ
ごく当たり前の≪家庭≫ってやつやな
そして明日も≪仕事≫という戦場で『役立たず』と卑下されても自分の持てる力で戦うんだ
全てを≪自然≫と呼ぶために
きっと全国のお父ちゃんはそう思ってるんだろうな
おやすみなさい
全てを忘れるために